プラットフォーム戦略(R)とは「複数の関係するグループを、場あるいは舞台(プラットフォーム)に載せることで、外部ネットワーク効果を生み出し、一企業という枠を超えた、新しい事業のエコシステム(生態系)を作り出す」経営戦略で21世紀の「場」を支配するという世界最先端の企業戦略です。
プラットフォーム戦略®は(株)ネットストラテジーの登録商標です(登録第5508190号)

GAFAと呼ばれるGoogle Apple Facebook AmazonやMicrosoftなどの世界の時価総額上位企業の多くがこのプラットフォーム戦略(R)に基づいています。

日本でも近年上場している会社にはプラットフォーム企業が多数存在しています。なぜならば急成長することができるビジネスモデルだからです。

未上場ベンチャーでも商用でも無料で利用できクレジット表記も必要ない写真素材サイト 写真AC や イラストAC を運営するACWorksという会社は社員はわずか数名であるにもかかわらず既に350万人以上が利用する日本最大級の素材プラットフォーム企業に急成長しています。

ここではわかりやすく、成功事例、失敗事例を交えて詳しく説明しましょう!

プラットフォーム戦略(R)とは

2017年末時点での世界の企業の時価総額ランキングのトップ5は、一位アップル、二位アルファベット(グーグルの持ち株会社)、三位マイクロソフト、四位アマゾン・ドット・コム、五位フェイスブックです。
(追記 2019年1月11日時点では アマゾン、マイクロソフト、グーグル親会社のアルファベット アップルの順番になっています
参照 アマゾンが初の時価総額世界一 )

アップルとアマゾンは時価総額が一時史上初めて1兆ドルを超えて話題になりました。その後2018年11月にはマイクソフトが1位になるなど目まぐるしく順位が変わっていますし、最近は中国のアリババなども上位に食い込んできています。

これらの企業に共通する企業戦略は、いまやすっかり有名になったプラットフォーム戦略Ⓡと呼ばれる企業戦略論です。
これは私と当時ハーバード・ビジネススクール准教授だったアンドレイ・ハギウ博士との共著『プラットフォーム戦略』(東洋経済新報社)が2010年に刊行されベストセラーとなりワールドビジネスサテライトなどでも特集されましたが、それから十年弱たって、プラットフォーム戦略Ⓡはすっかり有名になりました。もしまだ読んでいらっしゃらないのであれば元祖プラットフォーム戦略本ですのでぜひお読みください!なお仕事上経営コンサルタントの方にお会いすると殆どの方が読んでいるとのことです。

平野 敦士カール の プラットフォーム戦略―21世紀の競争を支配する「場をつくる」技術 を Amazon でチェック!

プラットフォーム戦略Ⓡとは、関係する企業やグループを「場=プラットフォーム」に載せることで、新しい事業のエコシステム(生態系)を構築する経営戦略のことです。

ここではインターネット・ショッピングモールの「楽天市場」を「プラットフォーム」の例にとりましょう。

小生は楽天グループ企業の取締役もしておりましたし、何より創業者である三木谷浩史氏は興銀マン時代は小生と同じ投資銀行グループにいて小生の後輩でもありましたので創業時代からずっとその歴史を見て来ました。

楽天は彼ら自体がモノを売っているわけではなく、「楽天市場」という場に、モノを売りたい小売店をたくさん集めています。

商品の魅力によってクチコミを誘発し、その集客力を武器としてさらに出店数を増やしながら、集客した会員を粗利益の高い自社ビジネスすなわち楽天カードにつなげるという流れをつくったことが、楽天の成功要因といえるでしょう。

ここで重要なことは、情報も、人もお金も、そのすべてがプラットフォーマーに集まる、ということです。
プラットフォームの主催者を小生はプラットフォーマーと呼びましたが今では一般的に使われているようです。

ネットワーク理論との関連でいえば、「人と人とをつなぐブリッジをさらに展開した『ハブ』というポジションにつくためには、どのような戦略をとればよいのか」ということについて、プラットフォーム戦略Ⓡは明確な指針を与えてくれます。

学問的な分野でいえば、ネットワーク理論は、主に社会学に依拠していてネットワーク自体の法則性を明らかにするのに対し、プラットフォーム戦略Ⓡは、主に経営学や経済学に依拠していて、自らがそのネットワークを最大限に活用する「戦略」を与えてくれるものである、とも表現できるでしょう。

なお本記事とネットワーク理論については 拙著「世界のトップスクールだけで教えられている 最強の人脈術」 を ご覧ください。

おそらくいまだに多くの人々は、新しいビジネスを構想するとき、ほぼ無意識のうちに「どんな新製品をつくろうか?」「どんな新サービスを生み出そうか?」と思うのではないでしょうか。

しかし、いま世界で急成長している企業がそう考えることはありません。
彼らはどんな「場=プラットフォーム」をつくろうか? そこで誰と誰をマッチングしようか? と考えるのです。

フランスのジャン・ティロール教授(二〇一四年ノーベル経済学賞受賞)たちは、二〇〇〇年初頭から、この理論に注目してきました。
日本でも大前研一氏が二〇〇一年に『「新・資本論」見えない経済大陸へ挑む』(東洋経済新報社)のなかでプラットフォームの重要性を指摘しています。

ノーベル賞と聞くと、最新の理論が入り組んだ難解な存在を想像してしまいますが、じつはプラットフォーム自体は古くからありますし、それはインターネットの世界だけで存在するわけでもありません。

男女の飲み会である合同コンパ(合コン)で譬えれば、わかりやすいでしょう。

すなわち、男性グループと女性グループという二つのグループを、出会いの「場=プラットフォーム」によってマッチングすることで、双方のグループに付加価値を与える合コンの機能は、古典的なプラットフォームです。

このとき、その場(プラットフォーム)の主宰者を「プラットフォーマー」と呼びますが、これは合コンの幹事をイメージするとわかりやすいと思います。

そして、合コンで最も多くの情報を手に入れることができるのは、いうまでもなく幹事です。なぜなら彼はその時間や場所はもちろん、誰を誘うかも自由に決められますし、参加者全員の連絡先という情報も入手できます。

さらにいえば、幹事はどの人とどの人の相性がよいのか、誰が誰を気に入っているのか、という情報すらも得ることができます。
合コンの幹事はまさにフリーマンのネットワーク中心性における「ハブ」になっている、ということができるでしょう。

プラットフォーマーに必要な資質とは?

では、そこで合コンの幹事になるために必要な資質とは、どのようなものでしょうか。

男性であれば、ものすごいイケメンでスポーツ万能、高学歴・高身長・高年収のような人でしょうか? 女性であれば美人で性格がよい人でしょうか?
おそらく、そうした人は普段から異性にモテるので、別に合コンに行かなくても出会いのチャンスがたくさんあり、そもそも幹事をする必要がないかもしれません。そして事実、合コンの幹事は別にイケメンでも、美人でもある必要はなく、モテる要素があまりない人でもできるのです。

代わりに幹事に必要とされるのは、会場探しや参加者への声がけなど、裏方の仕事をしっかりマメにやることのできる力です。

自分が前に出たいタイプの人よりも、周りの人たちに気配りができる人のほうが向いているともいえるでしょう。

ネットワーク理論でも、ネットワークを構築するうえで個人の属性は関係ありませんが、プラットフォーム戦略Ⓡにおいても、そこでどのような資質が必要か、あるいは必要ではないのか、ということを考えるのが大切なのです。

たとえばグーグルというプラットフォーマーは、自社でブログやホームページを作成しているわけではありませんが、検索サイトという「場」を提供することによって、ユーザーというグループとコンテンツというグループをマッチングさせ、それによって自社の広告ビジネスを展開しています。

楽天市場も代表的なプラットフォーマーの一つですが、彼らは決して自社で商品をつくって売ったりはしていません。あくまでお店に出店してもらい、そのお店の商品とお客さんとのマッチングを行なっているわけです。

インターネットの世界ではありませんが、ブランド品などを扱うアウトレットモールなどもわかりやすいでしょう。

運営者の多くは三菱地所、三井不動産などの不動産会社です。人気のブランドショップを集めることによって、自らはモノを売らなくても、ブランド品を買いたい多くの人を集客することに成功しています。

こうしたプラットフォームビジネスの成功例に共通して見られる特徴は、それにかかわっているすべての人にメリットを提供している、ということです。

たとえば、アウトレットモールに参加する店舗は、一店舗だけでそれを行なうよりもはるかに低コストで出店が可能になり、かつ効率的に集客が可能になります。トイレの設置や駐車場の運営などは、プラットフォーマーである不動産会社が行なってくれるからです。

とはいえ、そこで最も大きな恩恵を受けるのが、プラットフォームを提供している〝胴元〟であることも、いうまでもありません。

人気のブランドショップを集めることができれば、それまで人があまり来なかった地域でも、多くのお客さんを集めることが可能になります。そこでSNSなどを通じて評判が伝われば、宣伝費をかけなくてもさらに来客数は増加するでしょう。

そうなると、そこに参加したいと思うブランドショップが増え、ますますお客さんが増えていくという「ポジティブフィードバック(正の循環)」が生まれ、プラットフォーマーである不動産会社には、テナントの出店料やその他の売上が加速度的に集まります。

そして、来場したお客さんはすべてプラットフォーマーの会員となり、いったん会員になれば、メールなどで何度でもイベントなどの告知や来店誘導をすることができるようになるのです。

いかにメンバー間に公平な配分ができるか

このようにプラットフォーマーは裏方として「場」の整備を行ない、「他社の力」を利用することによって、参加するグループすべてに価値を与えることで満足感を得てもらうわけですが、そこで最も利益を得るのはプラットフォーマー自身です。

ただし、プラットフォーマーだけが利益を総取りするようなことをせず、参加者に満足のいく収益の配分をきちんと行なうべきであるということです。

合コンの幹事だけがおいしいところを毎回もっていってしまえば、いつしかその人が開く合コンには人が集まらなくなるでしょう。逆に、参加した人が満足すれば、よい評判がその人のネットワークを通じて急速かつ自動的に拡散します。

いまや世界最大のEコマース(インターネットなどのネットワークを介して商品情報を発信し、契約や決済などを行なう取引形態)企業になったアマゾンも、当初はオンライン書店でした。インターネットで本を売るサイトだったのです。

その後、アマゾンは中古本などのマーケットプレイスをつくることでプラットフォーム化を図りました。

とりわけアマゾンアソシエイトと呼ばれる仕組みによって、ユーザーがアマゾンの商品をツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアで自然に拡散してくれたことで、急拡大したのです。

アソシエイトまたはアフィリエイトとは、成果連動型報酬広告のことです。

たとえばあなたのブログである企業の商品を紹介し、そのブログ経由で商品が売れた場合、その商品の販売者から売上の一部を報酬としてもらえるという、成果報酬型広告の仕組みです。

ユーザーのフリクションを軽減することが成功のカギ

近年、Airbnb(エアービーアンドビー)やUber(ウーバー)といった「シェアリングビジネス」と呼ばれる新しいかたちのプラットフォームが急速に拡大し、既存産業を破壊(ディスラプト)しながら新プレーヤーとして台頭しています。

しかしAirbnbは、世界最大のホテル宿泊事業を展開していますが、物理的な意味での部屋は一つも所有していません。
ウーバーも世界最大のタクシー事業を行なっていますが、原則としてクルマはもっていません。
Airbnbは部屋を借りたい人と貸したい人を、ウーバーはクルマに乗りたい人と乗せたい人をマッチングしているのです。

とはいえ、彼らは単純にマッチングを行なっているだけでもありません。

もしあなたが自宅に空いている部屋があったとしても、それを「赤の他人」に貸したいと思うでしょうか。多くの人は、泥棒だったら怖いから無理だとか、物を壊されたり盗まれたりするのではないかとか、もしかしたら危害を加えられてしまうのではないか、と恐れるかもしれません。「赤の他人」に貸し出すわけですから、そう感じても不思議ではないでしょう。

こうした人の行動を阻害する要因を「フリクション」と呼びます。
フリクション(Friction)とは、英語で摩擦あるいは障壁という意味です。

このフリクションを取り除く仕組みをつくったことで、Airbnbは一気に広がったのです。

つまり彼らは貸し手と借り手双方に「信頼」の仕組みを提供しました。

具体的には、スマートフォンのアプリで双方のニーズを満たすような最適なマッチングを行なうだけでなく、双方向のやり取りを記録し、さらに決済までアプリで完結できるようにしたのです。

これによって、宿泊者以外の人がその情報を見たときも、宿泊先のオーナーのことを知ることができるようになりました。
さらには万一、物を壊してしまったなどの被害が出た場合に備えて、最大約一億円の保険もAirbnbは提供しています。

ウーバーも同じように、フリクションがなくなるための仕組みを提供しています。

自分のクルマに他人を乗せてお金を稼げたらいいだろうな、と思う人はたくさんいることでしょう。

自家用車をもっても月々の駐車場代は高いし、実際に自分でクルマに乗る日は限られている……。その一方、タクシーを利用している人も、タクシー代は高いし、なかなかすぐに捕まらない、と考えているはず。

そこでの双方の悩み、つまりフリクションをウーバーは解決したのです。

私も何度かウーバーを使ってみましたが、とても快適でした。まずスマートフォンの専用アプリをダウンロードし、自分の現在位置を伝え、クルマを呼びます。行き先も事前に入力します。するとスマホのアプリ上の地図に周辺にいるクルマが表示されて、「あと五分で到着します」などの連絡があります。その時間どおり、目の前に黒塗りのクルマが到着します。

乗車すると、目的地を伝えなくとも走り出します。すでに目的地はスマホで知らせているからです。目的地に着いたらそのまま降ります。支払いはすでにクレジットカードで終了しています。
その後、ドライバーの評価をします。たまにあまり道に詳しくない人もいるので、そうした場合は少し厳しめの採点をします。態度が悪い人も同様です。しかしほとんどは素晴らしいドライバーです。それらをすべてスマホのアプリで行ないます。

こうした流れ一つをとっても、ウーバーが成功したのは、たんにタクシーを呼ぶためのサービスではないから、ということがわかるでしょう。

マッチングだけでなく、そこでのドライバーと乗客とのあいだのすべての取引をスマートフォンのアプリで記録し、GPSで位置情報を把握し、さらに決済まで行ない、双方の評価を実施することで、双方への「信頼」を提供することに成功したからです。

いまや遊休不動産などで使用していないものがあれば、何でもシェアリングサービスの俎上に載せることができます

少し前にはアメリカで自宅のトイレを貸してもらえる家を探せるAirPnPというサイトが話題になりましたし、日本でも店舗が休みの日に店舗の前の軒先を借りられる「軒先ドットコム」などが注目されています。使っていない服を貸し借りする「エアークローゼット」など、それこそアイデアは無限に出てくるのではないでしょうか。

重要なのはマネーよりもフレンドシップ

かつての企業戦略は簡単にいえば、顧客の「経済的なニーズ」、つまり、物欲や金銭欲を満たすことによってどう利益をあげていくか、というものでした。しかしフェイスブックやツイッターといったSNSの急激な拡大によって、企業は顧客の「経済的なニーズ」を満たすだけでなく、「ソーシャルなニーズ」、具体的には友だちとの絆やつながりを支援することが収益につながる、という認識をもつようになったのです。

なぜか。ボストンのコンサルティング会社であるMPDで小生の同僚だったミコワイ・ヤン・ピスコロスキ(通称ミシック。現在はスイスIMDビジネススクール教授)は、『ハーバード流ソーシャルメディア・プラットフォーム戦略』(平野敦士カール訳、朝日新聞出版)において、以下のように主張しています。

「ソーシャルの失敗(ソーシャルメディア上で交流がうまくいかないこと)が生じるのは、相互交流コストに起因する。どのように発生するのか具体的に2人の人間の双方にメリットを生む相互交流で考えてみよう。そこで得られる利益が、彼らが各自他の活動をして得られる利益よりも大きければ、この関係は互恵的な関係といえる。次に、相互交流コストが存在する可能性を考えてみよう。たとえば、2人の人間が離れたところにいる場合、あるいは交流を始める際に著しい不快感を経験する場合に、コストが発生する。相互交流に伴うコストが上回る場合、交流が始まることはなく、ソーシャルの失敗が発生する。」

ハーバード流ソーシャルメディア・プラットフォーム戦略 ⇒

この「ソーシャルの失敗」を起こさないように、企業は「マネー」ではなく「フレンドシップ」を大切にすべきである、という認識が一気に高まってきたのです。

まずは企業が先に顧客に有益な情報を提供することで、その顧客に①新しい友だちが増える、②既存の友だちとの関係が強化される、というメリットを与えることができれば、顧客は「喜んでお金を払う」ようになり、その企業のファンになってくれる、とミシック教授は主張しました。

そこでは決して宣伝したり、売り込んだりしてはなりません。あくまで有益な情報を先に提供すること、そして同じ関心をもつ人々のコミュニティをつくることが重要なのです。

多くの人が勘違いをしているのはこの点でしょう。毎日ブログに食事の写真を載せたり風景の画像を載せたりしても、それを「情報」と呼ぶことはできません。ほんとうの情報とは、読者のためになる、読者の抱えている問題を解決するようなものを指すのです。

人がある商品をほしいと思い、そこから購入に至るまでには、大きく分ければ二つのパターンがあります。

一つは、その広告や実物を見て、そのもの自体のデザインや機能などに魅力を感じ、ほしいと感じる場合。

みなさんもほしいものや行きたいお店などがあるときには、グーグルなどの検索エンジンで調べるか、食べログなどのクチコミサイトを見ることでしょう。グーグルのビジネスモデルはまさに、このように能動的に「調べる」人たちの存在を基礎として、そこに最適な広告を配信する技術を開発したことから生み出されたのです。

もう一つは、それまでまったく興味がなかったにもかかわらず、他人、とくに信頼できる人のレコメンデーション(推薦)やクチコミを見ることなどによって、初めてそれをほしいと感じる場合。

この領域は、単純な広告やグーグルなどの検索エンジンではアプローチできない部分です。

友だちや信頼できる人からの推薦は、単純な広告よりもはるかに心を動かされます。それが強い消費行動に結びつくのは当然ですが、よく考えてみれば何のことはありません、これはご近所の奥さんたちが集まった〝井戸端会議〟で話題になった商品をみなが買う、というのと同じ原理です。

そうした原理がそのままインターネットの世界に出現したのが、SNSなどのソーシャルメディアであるといえるでしょう。リアルの人間関係がそのままインターネット上に展開されたからこそ、実名登録のフェイスブックが支持され、それがそのまま世界一のプラットフォームになったのです。だからこそ、そこで企業は顧客の「ソーシャルなニーズ」を満たすことができれば収益をあげられる、ということになるわけです。

プラットフォームの作り方

そうした収益化を推し進めるために、企業は自社のバリューチェーン(価値連鎖)のなかで、どの部分をソーシャルなプラットフォームにするか? という視点をもつことが重要になります。

バリューチェーンという概念は、ハーバード・ビジネススクールの看板教授であるマイケル・ポーターが提唱したもので、「企業の主な活動は購買した原材料などに対し、各プロセスにおいて価値(バリュー)を付加していくものだ」というものです。

たとえばパン屋なら、小麦粉や牛乳、イースト菌などの材料を混ぜ合わせ、焼き、それらを包装して店頭に並べて売るという一連の工程のなかで、価値が創造されていることになります。

では、それらの工程の一部をソーシャルプラットフォーム化するとは、具体的にはいったいどういうことでしょうか。

たとえば、レストランの情報や評価は従来、ミシュランのようにある会社のスタッフや、その会社が依頼した特定の人物によって担われてきました。世界で一億人以上が利用しているYelp(イェルプ)というレストラン情報サービスや、OpenTable(オープンテーブル)というレストランの予約と情報サイト、もちろん日本の食べログは、そうした部分をソーシャル化、つまりユーザー投稿型にすることによって、掲載店舗数やユーザーを飛躍的に伸ばすことに成功したのです。

あるいは日本のレシピサイトのクックパッドも、従来は料理研究家などに取材をしたうえで、雑誌が掲載していたレシピをソーシャル化、すなわちユーザーからのレシピの投稿型にすることでレシピの数自体を一気に増やし、多くのユーザーの獲得に成功しました。

もちろんその投稿内容やユーザーによる評価については、信頼性に欠けるという指摘もあります。そのために投稿者が自分の投稿したものに評価をつけられないようにする、あるいは悪質な嫌がらせなどには通報システムをつくるなどすることで、ユーザーから一定レベルの信頼を得られるよう、運営側も対策をとっています。

成功するプラットフォームの三条件

それではどのような特徴が「成功するプラットフォーム」にあるのでしょうか。小生は以下の三つがあると考えています。
  

1 成功するプラットフォームの第一の特徴は、そのプラットフォームで社会に存在するどのような問題点を解決したいのか? ということを明確に意識していること

成功するプラットフォームは非常に具体的な経営理念を有していて、社会に存在するさまざまなフリクションをなくすことによって、その参加者に新しい価値を提供しています。フリクションが軽減されるというメリットこそ、プラットフォームが生み出す価値そのものであり、その価値が大きいほど、そのプラットフォームの成功確率は高まります。

逆にいえば、フリクションがあるところにこそチャンスがある、という言い方もできるでしょう。

フリクションを解決することによって生まれる付加価値を参加者全員が満足するように分配することで、そのプラットフォームはさらに大きくなります。

成功する企業は、その核となる経営理念をもっています。経営理念は「ビジョン」と「ミッション」とに分けられます。ビジョンとは、将来、どのような姿や状態をめざしているか、ミッションとは、社会にどんな貢献をしたいのか、ということだと理解すればよいでしょう。

日本企業で有名な理念としては、たとえばパナソニック創業者の松下幸之助氏が唱えた「水道哲学」(水道の水のように低価格で良質なものを大量供給することによって、物価を低廉にし、消費者の手に容易に行き渡るようにする)があります。これは松下氏が戦後の混乱期のなかで、日本に対して果たすべきミッションを具現化したものです。

ちなみにプラットフォーマー企業の経営理念は、以下のような内容です。

アマゾン・ドット・コム 
Earth’s most customer centric company.
(地球で最も顧客中心の企業)

グーグル
To organize the world’s information and make it universally accessible and useful.
(世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする)

フェイスブック
Bring the world closer together.
(人と人とがより身近になる世界を実現する)

いずれにもITによる利便性というイメージを越え、自らの力によって人々の役に立ち、世の中を変える、という強い意志を感じるでしょう。そうした経営理念や経営哲学への共感を呼ぶことができれば、顧客はその夢を実現しようとする仲間になってくれます。世の中のためになること、誰かの問題を解決すること。これをやりたい! 実現したい! という情熱や信念こそが、共感を集めるのです。

その一方、そこで生まれた付加価値をプラットフォーマーは参加者にどう適正に分配するのか、ということに対しても、心血を注がなければなりません。崇高な理念を謳っていても、結局はプラットフォーマー一人だけが儲かるような仕組みが確立してしまうと、参加者は他のプラットフォームに移ってしまう可能性が高くなります。

みなさんもオンラインショッピングを行なう際、アマゾン、楽天、ヤフー、あるいはお店のホームページなど、さまざまなサイトを利用されていることでしょう。こうして複数のプラットフォームを使うことを「マルチホーミング」といいますが、そこで満足できない経験をすると、ユーザーはすぐに他のプラットフォームへと逃げてしまうのです。

そこで自身がプラットフォーマーになるときにもつべきイメージは、「自分一人で一億円稼ぐのではなく、一〇人で一〇〇億円稼ぐことで、一人当たり一〇倍稼ぐ」という発想の切り替えです。つまり、自分一人で一億円を稼ごうとするのではなく、一〇人で一緒にプラットフォームをつくることで全体の収益のパイを一〇〇億円に増やし、結果として一人当たりの儲けの金額を一億円から一〇億円へ増やす、というイメージをもつのです。

日本企業はこうした発想がなかなかできず、どうしても、自分だけで利益を独占したほうが儲かるのではないか、と考えてしまいがちです。一社で稼ぐ金額を一億円から一〇億円に増やそうとばかりするのです。

他方、成功するプラットフォーマーはいかに多くの企業とアライアンス(提携)することでプラットフォームを大きくしていき、参加者全員が得をするようになれるか、と考えます。一人(一社)では実現できないことが多くの仲間と実現できるからこそ、プラットフォームの存在価値があるのです。

一例を挙げましょう。これまで企業間取引(B2B)のプラットフォームはなかなか成功しないといわれてきました。なぜならば企業同士の場合には、すでにある程度、交流を行なえるような仕組みが存在していたからです。

それにもかかわらず、〝中国のアマゾン〟ともいわれるアリババが、B2Bのプラットフォームで成功したのは、中国ではモノが売れても入金がなされないなど、企業間の資金決済への信用度が低い問題を解決したからだとされています。

そこでアリババは、「エスクロー口座取引」を導入することによって、企業間の資金決済の信頼度を担保し、フリクションを大幅に削減しました。「エスクロー口座取引」とは、売り手と買い手のあいだに第三者である金融機関を介することによって、双方が納得した段階で代金決済をするという仕組みのことです。興銀出身だった小生が楽天オークション(当時)を作る際に最も強く主張したのがこのエスクロー口座の導入でした。

モノの売買の際には、まずモノを買う側が代金を金融機関に預けておき、モノが買い主に届いた段階で、当該代金を売り主の口座に振り込むというスキーム(手法)といえば、イメージしやすいでしょうか。

アリババの創業者であるジャック・マーはかつて中小企業で働いていた経験があり、中国に無数に存在するスモールビジネスを助けたいという強い思いをもっていました。

そこでプラットフォームに「エスクロー口座取引」を持ち込むというイノベーションを起こしたことで、アリババは第三者金融機関を含め、すべての参加者にメリットを提供することに成功したのです。

2 成功するプラットフォームの第二の特徴は、「場」に参加する人同士の交流が活発かどうか、「自動増殖機能」を備えているか

そのプラットフォームに行けば、自らのニーズが満たされることを参加者が認識すれば、その参加者はそれを周りの人に伝えてくれます。そこで交流が発生することによって、プラットフォームの価値は上がっていきます。

重要なことは自ら宣伝を行なうのではなく、参加している人がどんどん他の参加者を招いてくれる仕組みの構築です。先にご紹介したアマゾンアソシエイトの仕組みは、この自動増殖に大きく貢献しました。

あるいはフェイスブックがたった数年のうちに、全世界で二〇億人ものユーザーを獲得できたのも、ゲーム作成のための仕様(API=アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)を公開して、多くの会社がゲームを自由に作成できるようにしたからです。

このAPI公開によって、多くの会社が多数のゲームを投入しましたが、そのゲームの多くには「友だちを誘う」という機能がありました。ゲームをするためには友だちを誘う必要があるため、フェイスブックの会員になる必要があり、フェイスブックの会員はどんどん増えていきました。
その結果、フェイスブックは自ら宣伝や勧誘をしなくても、ゲームの制作会社、そのゲームで遊ぶユーザーたちによって自動的に会員が増加する仕組みを構築できたのです。

このようにプラットフォームを拡大するためには、いかにして「交流」を活発にする仕組みを取り入れるかが重要となります。
そして、この「自動増殖機能」を実装するためには、四つの重要な考え方があることを、『最新プラットフォーム戦略 マッチメイカー』(平野敦士カール訳、朝日新聞出版)において、シカゴ大学講師のデヴィッド・S・エヴァンス博士と、元マサチューセッツ工科大学スローンスクール学部長でアメリカ合衆国大統領の経済アドバイザーでもあったのリチャード・シュマレンジー博士は明らかにしました。この二人もボストンのMPDというコンサルティング会社における小生の同僚です。
同書は日経新聞でも書評に取り上げられ学術的にも高い評価を得ている必読書です

最新プラットフォーム戦略 マッチメイカー ⇒

順番に解説していきましょう。

ノーベル経済学賞を受賞した4つのネットワーク効果とは

①サイドスイッチング

これはフェイスブックやツイッターのように、他人の投稿を見る人が、自分でも投稿することができる、というものです。

②フリクションレスエントリー

これはフリクション(摩擦)がない投稿ということです。画像や短文など、誰もが簡単に投稿できるものがよいということです。インスタグラムやツイッターが流行った理由は、画像であるため、あるいは一四〇字という制限があるために、誰でも簡単に投稿ができて交流がしやすかった、という部分にこそありました。

③最適なマッチングアルゴリズム構築

マッチングアルゴリズムとはすなわち、参加者同士が意図した相手と出会うことができるような仕組みを構築することです。
たとえば合コンに足を運んでもいつも出会いがなければ、多くの人は参加するのをやめようとするはずです。逆に、事前にどのようなタイプの人が好きなのか、趣味は何か、どのような考え方の人を求めているのかなどの情報があれば、そこでマッチングが実現する可能性は格段に高くなるでしょう。

グーグルの検索が高い人気を得たのは、検索する人が意図するような内容のサイトがすぐに探せたからです。多くの検索エンジンが存在するなかで、ユーザーがほしいと思っていた情報を最も素早く検索結果として表示できたのが、グーグルなのです。

このように最適なマッチングをするためのアルゴリズムこそ、そのプラットフォームが自動的に増殖するかどうかの最も重要な点だといえます。とはいえ、具体的にどうやって最適なマッチングアルゴリズムをつくればよいのでしょうか。

2014年にノーベル経済学賞を受賞したフランスのジャン・ティロール博士は、「四つのネットワーク効果」という概念によって、そのアルゴリズムを構築すべきである、と述べました。

「四つのネットワーク効果」とは、「直接効果」における正と負、「間接効果」における正と負の四つを指します。

ここでいう「直接効果」とは、プラットフォームに参加する同じグループに与える効果のことです。「間接効果」とは、異なるグループに与える効果のことです。そしてそれぞれに正と負の効果が起こります。つまり合計で四つの効果が起きうるのです。

これだと何をいっているのかわからないでしょうから、簡単に説明しましょう。決して難しくはありません。

たとえば、男性グループと女性グループの合コンを考えてみましょう。あなたは男性であると仮定します。その男性グループに超イケメンでお金もちのAさんが参加すると聞いたとき、あなたはどう感じるでしょうか。正直にいえば、強力なライバルが登場したと思って、嬉しくはないことでしょう。これが男性という同じグループに生じる「負の直接効果」です。

一方、もしあなたが女性で、男性に超イケメンでお金もちのAさんが参加すると聞いたらどう思うでしょうか? おそらく多くの方は嬉しく思い、ぜひ参加したいと感じるのではないかと思います。Aさんという男性の参加という一つの事象は、女性グループという異なるグループに、「正の間接効果」を生じさせているのです。

それでは、女性にはモテないけれど、著名人である男性のBさんがそこに参加した場合は? おそらく男性はBさんが参加することで興味をもって参加する可能性が高くなるのではないかと思います。一方で女性も、別にBさんはタイプではないけれど行ってみてもいいかな、となる可能性があります。この場合には、男性という同じグループにとって「正の直接効果」が生じるとともに、女性という異なるグループにも「正の間接効果」が生じています。

こうした「四つのネットワーク効果」という概念がとくに役に立つのは、どのグループにいかなる価格を設定すべきかを検討する場合などです。たとえばある合コンでは男性は一万円の参加費なのに、女性は五〇〇〇円、場合によっては無料だったりします。これは女性がなかなか集まらない場合です。しかし、そこで男性が医者や弁護士などの人気職業に限定されていれば、逆に女性が年会費数十万円を払う一方、男性はほとんど無料、という場合もあります。

こうした価格設定について、「四つのネットワーク効果」を見ながら調整することで、その「自動増殖機能」をさらに高めることができるのです。

④参加グループのバランス

「自動増殖機能」を実装するための四つ目の考え方は、参加グループのバランスがとれているかどうか、ということです。これも実際にあった失敗事例で説明しましょう。

あるお見合いサイトに絶世の美女が参加したら、多くの男性がその画像を見てメールを送りました。大量のメールが殺到したために、結果的にその女性は退会してしまいました。

その後、そのサイトでは、画像を見る前に趣味や考え方のアンケートをとることで、内面的にもマッチングするように候補者を絞ることに変更した結果、男性と女性の双方に高い満足度がもたらされた、ということです。

先の「四つのネットワーク効果」でいえば、負のネットワーク効果を最小化するために制限を行なうことで幸せなマッチングを増やせる可能性が高まる、といえるでしょう。

これは「質のバランス」ですが、「量のバランス」が重要なことも理解しやすいはずです。男性が一人だけで女性が一〇〇人の合コンは成立しません。質・量ともにバランスをとることによって、「自動増殖機能」を高めることができるのです。

3.成功するプラットフォームの三つ目の特徴は「クオリティコントロール」すなわち質の管理。

プラットフォームが拡大していく一方で、そのトレードオフ(一方を追求すれば他方が犠牲になる状態)としてコンテンツの質が低下したり、ユーザー同士のトラブルなどが多発してしまっては本末転倒です。プラットフォーマーは、プラットフォームの弱体化につながらないように質のチェックの仕組みを設けるなどのコントロールをすべきです。

「悪貨は良貨を駆逐する」といいますが、たとえば、かつて北米の家庭用ゲーム市場の八割のシェアを獲得して大成功した「アタリ」が、わずか数年で売上が三〇分の一程度に激減し、実質破綻した「アタリショック」のような例があります。

ゲーム機メーカーであったアタリはスティーブ・ジョブズが在籍していたことでも有名な会社ですが、自社のゲームソフト以外の第三者による粗悪なゲームソフトでも遊べるようになってしまったために大量の質の低いゲームが氾濫し、アタリのゲームはどれもひどいという評判が立ってしまったことで人気が急落して、「アタリショック」と呼ばれる状況に陥ってしまったのです。

最近もツイッター社の身売り話が出ましたが、最終的に誰も買収しようとしなかったのは、そのクオリティチェックがなされていないことが要因だとも報道されました。ツイッター社もようやくその重要性に気がつき、規約の変更などを実施していますが、その実効性に注目したいところです。

それらを身近な例に転じれば、もしあなたが勉強会に参加した際に知り合った人から、そのあとで高額な商品の売り込みを受けたとしたら、おそらく二度とその勉強会には参加したくないと思うのではないでしょうか。そこにおけるクオリティをどうコントロールするのか、ということに勉強会の主宰者は心血を注ぐべきなのです。

(追記)
ニワトリと卵問題を解決するプラットフォーム構築成功の4パターンは
1 ジグザグ方式  例えば楽天なら店舗をある程度増やしたらユーザーを増やし、また店舗を増やしていくイメージ
2 L字方式    例えばレストラン予約サイトであればすでに顧客になっているレストラン1000店舗をもとにユーザーを獲得するイメージ
3 Narrow&Deep方式 狭く深く たとえばFacebookはハーバード大学の学生限定ではじまり交流を活発化したあとに他大学に展開したイメージ
4 リアル連動 例えばTwitterは鳴かず飛ばずだったが リアルイベントでツイートすると電光掲示板に掲示されることを宣伝して一気にブレークした例

です

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